Four Elements リリース記念
ウラボロシ ロングインタビュー

ウラボロシ(uraboroshi)
2015年からチップチューン制作を開始。SoundCloudへの投稿や各種コンピなどを経て2017年4月1stアルバム『Reversible Mind』をリリース。9月には日本最大のチップチューン&ロービット・イベント『Square Sounds Tokyo 2017』に出演予定。「8ビット・サウンド表現の可能性の拡大」をモットーに、多彩なジャンルの幅広いサウンドの要素を取り入れるのが特徴。

▶ WEB▶ Twitter▶ Soundcloud▶ Bandcamp

8ビットサウンドにすべてを取り込む変幻自在のアーティスト「ウラボロシ」

今回は9月16日のSquare Sounds Tokyo 2017にも出演するウラボロシさんのインタビュー!今回もじっくりとお楽しみください。

「高校生の時に携帯電話の着メロを打ち込み始めたのがキッカケです」

ーーウラボロシさんは非常に作曲力の高い方だと思うのですが、作曲をするようになったきっかけは何なんでしょうか?
最初は携帯電話の着メロを打ち込み始めたのがキッカケです。今でも覚えていますが、高校生になって初めて購入した携帯電話(ガラケー)がシャープのJ-SH08(J-phone)でした。それで16和音を使って自作の曲を打ち込んだりしていましたね。
その当時は全くPCに関する知識がなかったため、携帯だけでやっていましたし、まだ誰にも公開もしていませんでした。
ーーそこから、ゲームボーイへ環境を変えていったんでしょうか?
いえ、その次は作曲環境をPCへ移しました。
着メロもMIDIと同じく128音色そろった音源ではあったのですが、端末内にしかデータを残せず、楽曲の公開などがやりにくかったのが一番の理由でした。
当時は今のようなDAWというよりは、MIDIでの打ち込みが一般的な時代ですね。ピアノロールの機能が充実していた「cherry」というMIDIシーケンサをよく使っていました。
SFC時代の「ファイナルファンタジー」(4、5、6)などのゲーム音楽の耳コピーをしたり、今はなくなってしまいましたが、「音楽の泉」というMIDI投稿サイトで自作曲を公開したりしていました。
DAWを使い始めたのはさらにその後ですね。今でも曲作りやマスタリングに使用している「SONAR」というソフトです。
と言っても、ここまでは自分で作った曲はそれほど多くはなかったです。
元々、作曲活動も学生時代に部活やサークルでやっていた吹奏楽やオーケストラの活動の一環でやっていたという側面もあります。
なので本格的に曲作りをして発表をして、と言うのは社会人になってからです。

実家に転がっていたゲームボーイ

ーーそれだけ数々の音楽活動を重ねたところで、どのようにチップチューンに出会ったんでしょう?
実家に昔自分が遊んでいたゲームボーイが残っていて、「これを使って何かできないか?」と思ったのがキッカケでした。
ニコニコ動画やSoundCloud等で調べて初めてGBで音楽をやれるということを知りました。
初めて聞いたのは、ニコニコ動画で見つけた「侵略!イカ娘」のGBアレンジでした。
そしてLSDjにたどり着き、自分で作るようになってからはSoundcloudなどでもチップチューンをよく掘るようになりました。
ーー意外なところからチップチューンに辿りついたのですね…ほかに影響を受けたアーティスト等はいるのでしょうか?
MIDI打ち込み時代から同年代の OSTER projectさんの音楽に影響を受けていました。
ボーカロイドPとしての知名度が高いですが、インストルメンタル、特にJazzっぽい楽曲が好きです。
チップチューンをやるようになってからは影響を受けた人はたくさんいるのですが、中でも 2mgさんF-zeroのリミックス(BIG BLUE)を聞いたのは衝撃でした。
GBでこんなに音が出せるのか…とワクワクしたことを覚えています。
LSDjの打ち込みにあたってネットに上がっている動画を参考にしました。
よく参考にしたのはKUNIOさんのキック作りや、Stress_TNのワブルベースの作り方などですね。
今回のリリースでは、LSDjの楽曲セーブファイルを全曲公開しています。
以前とぼけがおさんがリリースされた際に公開されていて、それに影響されたというのが大きいです。

自分のコンセプトは「毎回違う方向性」

ーー最近チップチューンのプレイヤーがかなり増えていると思います。その中で独自性を出すのは大変ではないですか?
チップチューンは同じ機材を使っていても、作曲者の好みや方向性によって作風が大きく変わると思っています。
作る人によって違う音が出ると言うのが面白いので、大変とはあまり思いません。
ただ、自分のコンセプトとして「毎回違う方向性」を考えています。
テクノやジャズ、ハードコアなど色んなジャンルをチップチューンでやるとどうなるか? とイメージして、毎回意識してジャンルを変えていたのですが、それが最近では思い当たる自分の引き出しを使い切ってきてしまいました。
それが少し大変です。
ですがチップチューンやってっていいなと思うのは、いっしょにライブをやっている人たちが一杯いることです。
その人達から刺激を受けたから曲を作り続けられています。

今回のリリースについて

ーー今回のリリース「Four Elements」のコンセプトについて教えて下さい。
今回の作品は、普段自分がコンセプトとしてやってきている「毎回違う方向性」を表したEPとなっています。
楽曲それぞれが 土/風/火/水 の要素となっていて、最後の1曲がそれらを包括するようなイメージです。
1曲ずつそれぞれジャンルや方向性の違う曲に仕上げました。
01 - Ancient Glasses
この曲は『土』を表した曲です。暗黒舞踏なイメージで、ダークでゴリゴリな感じに仕上げました。実は昔作った楽曲のリメイク作品となっています。なので、個人的に思い入れのある曲です。
02 - Momonga Hurricane!
この曲は『風』を表した曲です。インスピレーションは忍者ですね。忍者ハットリくんがムササビの術で滑空していくようなイメージで作りました。和風テイストで少しユーロビートっぽい感じに仕上げました。
03 - I.C.E. -Internal Combustion Engine-
この曲は『火』を表した曲ですが、タイトルはI.C.E.。これはInternal Combustion Engine(内燃機関)の頭文字をとったものとなっています。"静かに淡々と燃え続ける動力源"をイメージしたテクノ・トラックで、EP内の曲の中では比較的シンプルな音作りを目指しました。
04 - Rainy Hometown
この曲は『水』を表した曲です。雨の故郷のイメージで、水そのものというより実家の安心感のようなものを表した作品です。
05 - Elemental Ensemble!!
EP名が"4" Elementsですが、5曲目があります。ボーナス・トラック的な1曲です。吹奏楽やオーケストラ楽団に参加していた経験を元に、そのサウンドをチップチューンで表現しようとした曲です。「世界は土、風、火、水の4つの要素から成り立っている」というのが4元素の概念ですが、ゲームボーイ音源の同時発音数も実は4つ(矩形波x2、波形メモリx1、ノイズ)となっています。ゲームボーイ音源の4つの要素のアンサンブルをお楽しみいただけましたら幸いです。

「ライブでは毎回新しい曲やアレンジを入れるように心がけています」

ーー普段どのようにライブをされているんでしょうか?
ライブではいつもGBを2-3台使って繋いでいます。 楽曲はすべてGB1台でそれぞれ完結するように制作しています。処理能力を優先して、特別な場合以外はGBASPを使っています。
いまのスタイルでよくやるのは、BPMが遅い曲から始めて、だんだん速くなるようにライブを構成しています。 そのほうが自分もお客さんも盛り上がりやすい気がするからです。
毎回必ず新しい曲もしくはアレンジを入れるように心がけています。 例えば、パーティのイメージを自分で解釈したアレンジ曲を用意したりします。 直近ではボンバーマンのテーマ曲のリミックス等をやりました。 次のSquare Soundsではどうしようかまだ検討中ですが…
ーー今月(2017/9)は日本最大のチップチューンイベント Square Soundsに出演されますね!意気込みなどをどうぞ!
何より、今まで一緒にライブ活動をしてきた仲間と一緒に出演することができて嬉しいです。 自分が初めてソロパフォーマンスを行ったLo-Bit Freedomの頃からの共演者である とぼけがおさんやsdhizumiさん、 また、去年の後夜祭をきっかけに一緒に曲を作ったりするようになったyukkeromさんも出演されますね。
今回のリリースの作品もライブセットに組み込む予定ですので、楽しみにしていてください!

【ウラボロシ - discography】

ライブ情報


2017年 9月16・17日(土・日)高円寺HIGHにて開催される日本最大のチップチューン&ロービットのイベント「SQUARE SOUNDS TOKYO(スクエアサウンズ東京)」の1日目(土)にウラボロシさんと以前ESC TRAXでリリースしたとぼけがおさん、前夜祭にOldTypeUseIncomさんが出演されます!
今回のリリースで気になった方は生で体験するチャンス!
他著名なチップチューンアーティストが一同に会する超豪華イベントなので前夜祭、後夜祭も含めた4日間目一杯楽しみましょう!
■詳細

編集・テキスト:ESC TRAX/撮影:Terminal Connect